船橋市 税理士のご提案

日本経済を人間の年齢にたとえたら、いくつくらいだろうか。 五十代か、いや六十にはなっただろう。
あるいはまだ四十代後半…さまざまな意見が出そうだが、高度成長期が青年期、円高や石油ショックを世界中の驚異のまなざしを浴びながら乗り切ったのが壮年期とするなら、そろそろ中高年から熟年にさしかかっていることは間違いあるまい。 バブル崩壊後の、経済再生へ向けての試行錯誤は、さしずめ安定した「第二の人生」への準備期間といえるかもしれない。
不況が経済の病だとすれば、年をとって無理をすると病気になりやすいとか、いったん病気になると治るのが遅いというのも共通するところがあるような気がする。 さて、そういう日本経済だからこそ、体調はどうなのか、回復に向かっているというが本当に信じていいのか、これからどんな点に気をつけたらいいのか…の診断が必要になる。
早期発見・早期治療の必要性は、人間も経済も同じこと。 個々の企業や個人にとっても大切なことだ。
この景気の診断をし、予測するのは、専門家の仕事とされてきた。 政府・日銀をはじめ各研究機関のエコノミーストたちが、それぞれ学説を振りかざし、予測手法を開発して研を競っている。

しかし、「あまり当たらないなァ」と実感された方も多いだろう。 とくに政府見通しは、このところめっきり当たらない。
作る方は、経済運営の方針を示し、努力目標を掲げたもので、当てることを狙ったものではないというのだから、当たらなくて当然なのかもしれない。 民間の各機関の予測は当てようとはしているが、それぞれ一長一短、あまりたくさんありすぎて、どれを信用したらいいのか、目移りしそうである。
そうした予測の中から、自分の考え方に合った予測を選ぶためにも、それぞれが経済を見る目を養うことが必要になってくる。 できることなら、自分の目や経験にカンを加えて景気が読めるようになりたいものだ。
ところで、景気を読み、経済の流れをとらえるには、データが必要であることはいうまでもない。 各方面で発表されている経済統計は、それぞれの一面を語っている。
これをどう読み、ほかの指標を関連づけてどのように応用するか、大変重要なポイントだ。 しかし、統計にはクセがあり、限界もある。
統計数字もっともわかりやすい、日本経済の読み方だけひねくり回しても経済がわかるはずがない。 「経済は生き物だ」といわれるが、生きた部分を観察し、そのポイントを付け加えることによって、より実態がつかめるようになると思う。
経済はむずかしいという人がいる。 確かに間口が広く、奥も深く、議論すればキリがないが、反面、身近なものでもある。
私たち一人一人の生活や個々の企業の活動の集大成がGDPであり、日本経済を形作っているのである。 空の彼方の無縁のところで動いているわけではない。
それなりの目を持てば、いくらでも日本経済を読む窓が開かれているのである。 たとえば消費。

わが国のGDPの六○%近くを占める最大の需要項目で、この動向が景気を左右するが、これはわれわれ一人一人が何を買い、どういうお金の使い方をするかにかかっている。 あなた個人、あるいは周囲を見回して、自動車を買い替えたい、グルメを楽しみたい、と活発な動きが見えれば消費は伸びている証拠。
逆に「あまり買いたいものもないし、節約しよう」というムードが強ければ消費は冷えているわけだ。 ちょっと数字をはじいてみよう。
単純化のため、一億二六○○万人の日本人が赤ん坊からお年寄りまで、一人が一日平均一○○円余計に使ったとする。 電車を使わないでタクシーにしようか、ビールをもう一本飲もうかといえばすぐウン百円違うのだから、一日平均一○○円はごく最低の額と見ていいだろう。
ところが、なんと一年間で約四兆六○○○億円の消費が増えることになる。 逆に一日平均一○○円節約するようになれば、四兆六○○○億円の需要が落ち込んでしまう。
景気対策で少々の減税をしても、消費マインドが冷え込んでいたら効果が薄いというのは、こうした点を指すもので、消費者心理がいかに景気に影響を及ぼすかを示している。 統計数字はある約束事を定めて、それに基づいて計算されたもので、大切なデータだが、問題点も多く、すべてを言い表しているとはいえない。
そのデータを先ほどの〃窓〃で見た具体的な現象と重ね合わせることによって、より本当に近い姿が浮かび上がる。 とくに消費は、専門家でも読みにくい分野である。
消費すべてをカバーする統計が整備されていないからだ。 モノを買うのは百貨店やスーパーだけでなく、もっともわかりやすい、日本経済の読み方専門店、コンビニエンスストア等々、多様化している。
レジャーや健康産業などサービス中心の消費は、統計としてとらえがたいものが少なくない。 支出の面からとらえようとしても、「亭主渡し小遣い」などという項目は、何に消費されたのか、貯蓄に回ったのか、モノを買ったのかわかりにくい部分で、しかも、そうした中身を特定しにくい項目が増えているのだから始末が悪い。
どうしても、目線を低くして、現実の末端の動き、消費者の心理といった部分を補完しなければ消費はとらえられない。 言い換えれば、そういう末端の動きを積み上げ、統計と結ぶことによって消費の実態を探ることが可能なわけで、景気を診断する窓は多ければ多いほどいい。

町に出てタクシーを拾うとしよう。 お客の乗った車ばかりで空車が全然来ないような時は好況、景気がちょっと落ちてくるとよく拾える。
少しの需給の差がきわめて敏感に反映される業種である。 つまり、景気の変動で、ちょっと悪くなっても、ちょっと良くなっても反応が早い部分なのだ。
運転手に話しかけてみる。 「チケットのお客がガックリ減った」と嘆いたとすれば、法人が車代の節約を厳しく打ち出したことを物語る。
長引く不況で交際費は減っているものの、わが国は企業社会だとする諸外国の見方は変わっていない。 大企業を中心とした企業の行動の影響力がきわめて大きいのだ。
その企業が引き締めに転じたとすれば、ことはタクシー代だけではすまない。 事実、銀座のネオン街をはじめ、かなり広い範囲で消費にブレーキがかかっている。
こうした変化は、統計数字よりずっと早く表れる〃先行現象〃といえるだろう。 デパートを歩いても、何が売れているか、何を売ろうとしているかを見ることは、景気の一つの窓だし、パートの求人広告も景気を反映するだけでなく、産業構造の変化、ニューピジネスの傾向がうかがえる窓といっていい。

わかりやすい消費を中心に例を引いたが、設備投資も大企業が設備過剰に悩む時代になると、零細な中小企業の設備投資、合理化投資に注目が集まる。 アンケートの調査対象に含まれないような企業や、インターネット関連といった生まれたばかりの企業の動向が注目されるし、そういう中小企業の経営者は金利水準だけで単純に設備投資を決断しない。
さまざまな要因を加味し、カンを働かせて意思決定をする。 とても方程式に表せない。
そういう動きは末端までおりて接触してみなければわからないが、それぞれもっともわかりやすい、日本経済の読み方注意してながめれば、あなた独自の〃窓″が見つかるはずだ。 日本経済は、明治維新や第二次世界大戦後の時代に次ぐ「第三の変革期」を迎えているといわれる。

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